更新日:令和6年3月1日

ニホンナシの受粉用花粉確保の取り組みについて

 有効な防除策がなく、日本で未発生の重要病害「火傷病」が中国で新たに発生し、国内への侵入防止のため、令和5年8月30日に花粉の輸入が停止されました。輸入花粉が使用できなくなったことから、花粉の自家採取の取組を進める必要があります。

 果樹研究センターでは、自然開花前の花粉確保を目的として、切り枝の加温による開花促進に関する試験を実施しています。

 これまでの知見では、千葉県で花芽の生育ステージごとの加温条件と満開までの日数を明らかにしています。花芽の生育ステージ2(自然開花まで約8日)では20℃で約4日間で満開となり、ステージ3(自然開花まで約5日)では25℃で約2日間で満開となり1)、花粉採取が可能となります。花粉採取用の切り枝には、えき花芽の着生がよい長果枝を使用します。

図1 「長十郎」のえき花芽の生育ステージ2)

 果樹研究センターでは、静岡県の主要品種である‘幸水’および‘豊水’について、前述の切り枝の開花促進効果を確認する予定です。

 また、前述の方法では短縮日数が3~4日と短いため、自然開花前に十分な花粉を確保する時間がない可能性が考えられます。そのため、より早期に花粉を確保することを目的に、1月下旬、2月中旬採取の長果枝についても加温による開花促進効果を確認することで、花粉確保のために時間的余裕を持った長果枝の最適な採取時期を検討していきます。

図2 切り枝の保管の様子

 1)千葉県・千葉県農林水産技術会議(2023). 受粉用なし花粉採取マニュアル

 2)加藤 修・関本美知・石田時昭(1996). 二ホンナシ人工受粉用花粉の能率的な採取法. 千葉県農業試験場研究報告 37 : 61~72